機知に富んだ教訓や教え、たとえ話の宝庫。
始めたばかりの人が読んでも今ひとつピンと来ないと思う。
1〜2年やってみて、勝てなかったとしても生き延びていたら、新たな発見が必ずある。
テクニックは語られていない。
どうやったら勝てますかの問いには答えていないし、そもそも答えなどない。
トレードの考え方の根幹は単純でそれを示している書物もかなりあるし、検証結果も加えた面白い読みものもある。後日、自分が参考になったと思うおすすめ書籍を紹介できればと思う。
ただ、それらに書かれていることは、基本的な何かあるいはアイデアというだけで、それを知ったからといって勝てるものではない。
真似してみても失敗することの方が多いかも知れない。
下げ相場で買いで勝つ人もいれば、売りから入ったのに負ける人もいる。
手法は十人十色。
話を戻す。
この本は繰り返し繰り返し読んでいる。
バンドワゴンの話は何度読んでも身が震えるほど怖い。
バンドワゴン(楽隊車)が賑やかに進んで行く様子を思い浮かべて欲しい。耳に心地よい音楽がバンドワゴンのスピーカから流れてきてはいるが、バンドワゴンの後ろについて思う存分楽しんで盛り上がっているのはごく少数の人々である。音楽は大きな音で鮮明に鳴り響き、沿道にいる傍観者たちは甘い音楽に抗することができず、盛り上がっているように見えるパーティーに飛び込んで行く。傍観者たちが次々とバンドワゴンの後ろに参加していくなかで、当初パーティーの始まりを楽しんでいた人々は離れて行く。後からパーティーに参加してくる人々が増えてくるに従って、バンドワゴンは同じペースで前に進むことが困難になってくる。バンドワゴンの進行速度は徐々に遅くなり、陽気な騒ぎを見物していた傍観者のさらなる参加を可能にする。群衆はさらに大きくなる。酔っ払った群衆に囲まれてバンドワゴンが前に進めなくなるまで群衆は拡大を続ける。やがてバンドワゴンは完全に停止する。バンドワゴンが全く動かなくなると、さらに群衆が膨らんでいく。それも当然である。この時点でパーティーに参加することは極めて容易である。パーティーに加わろうとする人々はもはやバンドワゴンに飛び乗る必要もなく、何の苦労も要しない。しかし、バンドワゴンの本分は前に進むことである。停止しているバンドワゴンは不自然なものであり、したがって、その状態は長続きするものではない。
バンドワゴンは前に進もうとするが、進むことができない。
バンドワゴンの後ろに群がる群衆の数があまりにも多すぎる。
バンドワゴンは何とかこの重荷を振り払わなければならない。
そう、バンドワゴンはバックし、数人をなぎ倒すのである。
音楽が鳴り止む。群衆の中に困惑した顔が見える。何が起こっているのかがわからぬうちに、再びバンドワゴンは先程よりも乱暴にバックする。さらに多くの人々が放り出される。そして、現実が目の当たりになる。突如として餐宴は悪夢に変わり、パニックが生じる。ある者はバンドワゴンから飛び降りて死んでしまう。さらにバンドワゴンがバックすると、酔っ払って足許のおぼつかない人々が地面に投げつけられる。この時点で、わずかな、熱狂的なバンドワゴンのファンのみがつかまっている。彼らの命は非常に細い糸にかかっている。完全に自由になることができないまま、バンドワゴンはアクセルを全開にする。この最後のバックはあまりにも荒々しく、最後までバンドワゴンにしがみついていた人々は振り落とされ、地面に叩きつけられ重症を負ってしまう。
この時点で新たな傍観者の一群がどこからともなく現れる。彼らは酔っ払っておらず、平静である。彼らの一挙手一投足は、今しがたの惨劇に関わっていなかったためか、力強く、はっきりとしたものである。彼らは誰なのか。その新しく見える一群は決して新しい顔ぶれではなかった。その一群はパーティーが荒れ狂う前に静かにその場を離れていった人々だったのである。倒れている傍観者たちは、さらに衝撃的な事実を知る。彼らはパーティーの最初の頃に参加していただけではなく、パーティーを始めた人々であったのである。
折れそうな時、励まされてまた上を向くための大事な本。
そんなデイトレーダーが結構多いんじゃないかな。
儲かる話はあまりない。
退場せずにすむために熟読するべき本。